第10回「人事情報システム導入のプロセス」9
[ 掲載日 ]2023/10/30
[ 掲載日 ]2023/10/30
(1)システム更新の企画段階
9)経営会議対策(続き)
③ 作成資料について
人事部門の企画を進めている人には、意思決定機関である「常務会」や「経営会議」或いは「取締役会」などへ提案する資料作りには慣れているかもしれません。
しかし、こと情報システムとなると、提案される側が「よく分からない」や「分かっている人に任せる」などの消極的なモードに突入する恐れがあります。しまいには、あれは私の与り知らぬこと等の逃げを打たれてしまうことにもなり兼ねなません。
情報システム企画と共同提案できれば良いのですが、システム企画には人事制度の提案と異なるアプローチをお勧めします。それは何かというと、分かりやすい資料は勿論のこと、あまり細かい説明は要らないということです。人事制度はすべての社員が対象となるので、ほぼ全員が意見を持っています。しかしITになると、知識に自信がない参加者の意見は期待できないません。
ポイントをいくつかお示したいと思います。
【体裁】
提案に力が入ると、A4横のポワーポイントを10枚も20枚も作りがちですが、参加者のほとんどは理解できないと読まんでくれません。別のことに意識がいくと、本筋から外れた話になってしまうこともあります。
ズバリ言って、A3用紙に1枚か2枚がベストです。
もちろん、よく分かっている人用の詳細版も用意は致します。質問やどうしても細部に触れなければならない時に、詳細版を参考情報として示めせば良いのです。
大体、ITというだけで拒否反応の強い年配の経営者は、別のテーマなら鋭く反応するのに、どうも「分からない」を連発する傾向があります。従って、ストーリを組んでいても、ページが増えると追えなくなるらしいのです。できればページをめくる必要のないA3にすべてを格納してしまう。4象限に分けて起承転結でも良いし、結論を先行させ、理由を付けていくアプローチでも良いでしょう。1ページに纏めてあれば、問題の構造や対応策も理解しやすいと思います。また、文字だけの提案書も頂けませんね。特に問題構造を理解させるには、文字ばかりの説明資料よりも図やイラストを使った方が確実に理解してもらえます。
今や紙で提案を行う時代は去り、画面に写しながら説明を行うのが主流になりましたが、構造は同じです。A3の4象限を一つずつ写しながら説明を進めていく。説明を受ける側は、もらった資料のどこを説明しているのかよくわかるように進めることが大事です。
【目的】
よく、企画マンは「それでいくら儲かるのかね」という質問一発で殺されるといいます。こういう質問をされないように、目的をハッキリさせる必要があるのは当然のことですね。「儲かる」に繋がらない提案、つまりコストに関するポイントは必ず添えて提案することが需要です。それがたとえ防衛的な施策であろうとも、「得べかりし利益の喪失」や「問題発生時の損失リスク」など、出入りを必ず記述すれば良いのです。
経営戦略で使うバランススコアカードの最上位は利益の確保です。つまりあなたの提案が古くなったシステムのリプレースであっても、効率化や事故を未然に防ぐことで利益確保の条件を改善することにつながるのであれば、「いくら儲かる」或いは「いくら損失を防ぐ」という問いにも答えられるのではないですか。
この目的構造を納得できる資料が作れれば、経営会議でNGを出される心配はないといっても過言ではありません。駄目ダシをされるのは、この提案を実行するとどうなるかを説明できない或いは分かっていないからなのです。経営者はいつもそこを考えています。
【予算の一人歩き】
「それでいくらかかるのだ」という質問をされるのは、提案が不備だという証拠ですが、予算に関する項目は必ず必要です。というより、施策の実行は経営資源を使うことなので、よくいう3要素(ヒト・モノ・カネ)については必ず説明が必要になるということなのです。
予算だけではありません。そのために動くヒトやモノについても、できればコストの切り口で説明ができれば良いのですが。さらに前提条件として経営資源のお金以外のものも、必要だけど社内にないというならば、外部から調達する必要があります。それもまたお金に換算しないといせません。
金額については、概算だろうが参考価格だろうが、経営者はここで聞いたことは決まり毎として理解するので、注意が必要です。条件を付けるならハッキリと加えておかなければなりません。また再度、詳細版を提案するならいついつかは明記することが重要です。追加予算を前提とした提案はあまりお奨めできません。この辺のお作法は会社ごとに異なるので、情報システム部門にご相談すると良いと思います。
【議事録】
経営会議は経営企画部門の所管でしょうが、OKを頂いた事案は議事録を作成することが大事です。この提案に関する決定事項は、承認と条件、指示事項等を付して、関係者が共有しなけれはなりません。
また参加するベンダーにも、重要なポイントは説明しておく必要があります。重要なポイントは、内部書類とは別に、プロジェクトメンバーに共有するためにまとめておくのもよいでしょう。共有すべき事項についてはプロジェクト計画書やプロジェクトのキックオフ時に共有することをお奨めします。