人事情報システム基礎講座

人事情報システム基礎講座

第3回「人事情報システム導入のプロセス」2

[ 掲載日 ]2023/10/10

[ 掲載日 ]2023/10/10

1)人事情報システム導入の必要性

(2)リプレースの場合

 多くの企業では、こちらの方がケースとしては多いと思われます。ただし、現在の状況を見ると、自社開発のスクラッチや手組と言われる状況よりも、すでに何かしらのパッケージを使用しており、5年または7年以上経過し、資産としての償却が終了し、それなりに不満があることから、異なるパッケージを検討しようという傾向が多いのではないでしょうか。

【自社開発システムを使用している場合】

 自社開発のケースでは、比較的安定した環境であるAS400などがあり、基幹系も一斉に置き換えられる時期が近づいており、それに伴い人事給与も期限付きで検討せざるを得ないとか、今でもメインフレームが稼働しており、給与のみをシステムで処理し、人事はマスタ管理のみを行い、業務はエクセルで対応していたが、そろそろ本格的に考えなければならないとかいう場合があります。

 自社開発のシステムを保有している企業は、おそらく人事給与に詳しいスタッフがおり、独自の環境で最適化が行われてきたことでしょう。担当者の努力には感謝の念を抱きますが、後継者が不足していたり、段々と難しくなってきたり、あるいはコストが内部化されており、他社との比較が難しい場合もあります。そのため、基幹系が一新される際には、パッケージを検討することが重要になります。
 ここで注意しなければならない点がいくつかありますが、情報システムのコントロールが効果的で、基幹系と同じERPを使用するよう指示される場合、次に何を選択するかという問題は回避されます。これは、SAPなどのパッケージが既に決まっているためです。しかし、ERPは使いにくいという評判もあるし、安心感に欠けることもあります。

 人事給与をERPシステムで導入する場合の留意点は別に譲りますが、とにかくパッケージ選定の面倒なプロセスからは解放されますが、導入時の困難さには覚悟が必要です。基幹系が一新される場合でも、「人事はご自由にどうぞ」というケースでは、自社でどのパッケージが最適かを調査したり、業者の提案を受けたりすることになります。おそらく、人事部門に新しいシステムの選択権が委ねられた場合、ERPを選択する方針がなかなか出ることはないでしょう。ERPは「全体最適」を追求しており、業務部門から見れば非常に使いにくいと感じることがあります。また、ERPパッケージの導入にはコストもかかり、十分な理由がない限りは選択されないこともあります。

 ERPパッケージを使用し、独自の人事システムを開発できるのは、大規模企業に限られます。数万人の社員を抱える企業であれば、数億円のプロジェクトでも内部的な批判に耐えられるでしょう。また、大企業は信頼性も重要視され、国内の有名なパッケージを使用するよりも、評価の高いSAPなどで構築することが安心です。外資系のコンサルティング会社も当然に寄せ集まることでしょう。

 問題は、自社開発の人事システムを国内のパッケージに置き換える場合に生じる「妥協」というジレンマにあります。資金力が十分でない場合、要件定義で生じるギャップをどう埋めるかが悩ましい課題となります。機能が不足している場合、アドオンを開発することも考えられますが、費用には限界があります。また、すべての機能が標準で提供されるパッケージでも、どうしても適合しない場合の対処方法に行き詰まるリスクも存在します。

 自社開発の良いところは、「世界にひとつだけのシステム」である点です。レスポンスが遅いと言われながらも、ユーザーの要望に応じて機能を充実させてきた担当者にとっては、「あれだけ苦労して機能を開発してきたのに、それを簡単に置き換えるのか」と不満が生じることもあります。特に、システム部門やシステム企画に優れた担当者や管理者がいない場合、ユーザーとシステム担当者の機能開発はますます進展します。気付いた時には、非常に複雑なシステムになっていることがあります。

 内部管理のためのシステムにいくらお金を使っても構わないという会社は存在しません。しかし、慣行やパワーバランスの影響で、そうなることもあります。特に、ユーザー部門が「人事部」である場合は、その点を考慮すべきです。経理部にも「経費を認めてくれない」といった問題が存在する可能性はあるかもしれませんが、ここでは「人事」の話です。

 パッケージ選定の段階で、RFPを注意深く作成し、要件と機能を検討しても、100%事前に理解できるわけではありません。ベンダーはそれなりの経験から、うまく要件を整理できるでしょうし、ユーザーは高額な買い物をすることから、提案に対して慎重な姿勢を持つでしょう。契約を結んで導入を開始したものの、結局導入まで辿り着かなかったというケースは、ほとんどがこうしたコントロールがうまく機能しなかったことによるものです。では、このような不幸を回避するためには、どのようにすれば良いのでしょうか。