第7回「人事情報システム導入のプロセス」6
[ 掲載日 ]2023/10/17
[ 掲載日 ]2023/10/17
(1)システム更新の企画段階
7)RFIプロセスとは何か
人事情報システムの導入に関する企画書が完成したら、予算を獲得して導入のための準備に入ることになりますが、通常、予算獲得のためにまず経営会議などを通じて、この企画自体の存在とオフィシャル化を行います。つまり、まだ具体なプロジェクトとしてはスタートせず、「こういう企画があります、継続して進めていいですか、GOでしたら概算ですが予算を認めてください」というお願いとなります。
ここで企画書で作成したコンテンツで後々問題になるのは、やはり「コスト」の項目です。様々なルートを使って情報を集め、どのくらいのコスト感で進めればいいかに苦労するでしょう。
従って、企画段階の最後のプロセスは、このコスト感が正しいのか、またコストだけではなく、実際に企画した内容の実現性とどうなのかを裏付ける必要があります。
実際のシステム導入プロジェクトを発注する場合には、ベンダーと呼ばれるシステムを導入する企業に、提案を求めることになります。これはRFP(提案要求書)を作成して、複数の企業に提案をしてもらうのですが、実は企画段階でも同じようなプロセスを行うことになります。こちらはRFI(情報提供要請書)を作成して、完成していないながらも、企画に則した情報、主にはパッケージの標準機能の確認やライセンスや導入費用の概算見積を提供してもらうことが主眼です。
RFIを行わずにいきなり、各ベンダーに対して提案要求を依頼することも可能ですが、RFIプロセスを行うメリットがあります。それは、
1.最新のパッケージやソリューションについて情報が獲得できること
2.導入予算の立案に役立つ情報(概算見積)が獲得できること
3.ベンダーに対して、導入時期を案内することによって、導入に関わる人材の準備を行う余裕を与えること
の3点が考えられます。
つまり、自社がキチンとした情報を集めて、まじめに導入準備をしていると伝えることで、ベンダーにとってはビジネスチャンスの、ユーザにとっては適切な条件での選定ができるということになります。
RFIを自ら行うことも可能ですが、コンサル会社に依頼することもできます。この場合、中立が保てるコンサル会社で、業界内でのつきあいの広い会社を選定することが大事です。豊富な経験と知識がないと、狭い視野で自社にはふさわしくないベンダーを集めてしまう危険性もあります。また、特定のパッケージに誘導されるような立案作業になることも避けたいです。
この時点ではまだ詳細な導入計画もできていないわけですから、正直にここまでの作業でどの程度の予算が必要か、一般的な導入事例でのコスト、また体制などの組み上げ方に特殊性があるかなどのヒアリングポイントが必要になります。
RFIを作成するにあたって気をつけることは、おおよそ情報を収集する相手先のパッケージやソリューションが将来導入する対象となることを予想して、依頼を行うことです。つまり、「情報を提供してください」と表明した途端、御社はベンダーのターゲットになることを意味します。
当然、RFIを終えて次のフェーズに進むときに、振り落とされる候補はあるかもしれません。しかし、RFPはもちろんだが、RFIの段階でも先方では工数(作業時間)を使って、御社の要求に答えようとしています。つまり、タダでは成り立たない世界であることを念頭において欲しいのです。「相手も商売だから」といっては身も蓋もない。つまり、お互い紳士的にプロセスを進めてほしいと願っています。
具体的には次のステップで情報収集プロセスは進めます。
-1 今回の計画の概要をまとめます
・ 5W2Hが決まっているということは少ないが、導入時期や対象業務は明確にしておく必要があります(要はいつ、何をやりたいのか)
・ しっかりしたベンダーは「なぜそういう計画なのか」を知りたがるので、問題意識を明確に説明できることが望ましい
・ この時点で「要求定義」があれば越したことはありませんが、なければ最低でもクリアしたい課題があると良いです
-2 依頼を出すベンダーを決めます
・ 自社だけでやる場合は、ネットなどを使って調査することになります
・ 支援コンサル会社があれば、御社の計画に適したリストが提供されます
・ 選択の軸となるよう、現在利用中のソフトを提供しているベンダーも入れておいた方が良いです
・ 自社の規模ややりたい機能があるかなしかの情報程度でもリストは作成できます
-3 ベンダーに対して「情報提供依頼書」を作成します
・ 依頼内容
・ 依頼する背景(なぜ導入を行うか)
・ 概要計画(導入時期-計画日程、対象会社と従業員規模、自社体制など)
・ 機能概要や重要な機能についての質問表
・ 導入手法(大事なのは体制の組み方とPJの管理法)
・ 概算予算(事例ベース)
・ 導入事例(自社と同程度の規模や業界の事例と課題解消の事例)
※できれば導入費用も知りたいところですが、ケースにより異なるという事由で断られるかもしれません。百万の単位または千万の単位でも聞ければラッキーです)
・ 会社案内
・ 次段階のご協力要請について
-4 依頼書発送
RFIフェーズを、第一次選択フェーズととらえる場合もありますが、単なる情報収集と割り切って進めることもできます。しかし、依頼を受けたベンダーは、既に御社をビジソス上のターゲットとしているので、「御社の目はありません」とある時点で通知する必要があります。従って、内部では次のRFPを提出するベンダーを決めることになりますが、「次のRFPをお願いする「しない」の通知をどこかの時点でする必要があります。最後の項の「次段階のご協力要請について」は、そういう情報を流すことになります。