人事情報システム基礎講座

人事情報システム基礎講座

第1回「人事情報システムの分類」

[ 掲載日 ]2023/10/10

[ 掲載日 ]2023/10/10

(1)人事関連システムの類型
 ここで扱う「人事情報システム」とは、主に人事部門が使う基幹的な機能、すなわち社員の個人情報を記録する人事マスターや各人事関連業務プロセスを実行するための機能、そして社員の給与計算を行う機能や福利厚生を支援する機能等であります。ソフトウェアとしては、一から構築するスクラッチ開発アプリケーションではなく、パッケージソフトウェアです。

機能別に分類すると、
【人事系】
  ◆ 社員個人情報管理システム
  ◆ 組織管理システム
  ◆ 異動発令システム
  ◆ 採用管理システム
  ◆ 人事評価(考課・目標管理)システム
  ◆ 自己申告システム
  ◆ 教育研修システム
  ◆ 社員検索システム
  ◆ 帳票・台帳システム
【給与系】
  ◆ 月例給与計算システム
  ◆ 賞与計算システム
  ◆ 社会保険システム
  ◆ 年末調整システム
  ◆ 通勤手当管理システム
  ◆ 控除金(引去)管理システム
  ◆ 昇給システム
  ◆ 人件費管理システム
  ◆ 退職金計算システム
【その他】
  ◆ 勤怠管理システム
  ◆ WEB申請システム
  ◆ 福利厚生管理システム
  ◆ カフェテリアシステム
  ◆ 人材育成システム
  ◆ 統計処理システム(ビジネスインテリジェンス)
などに分類されます。

 人事情報システムは、これらの機能をまとめて統合化したパッケージソフトウェアがあり、個別業務システムをソリューション化した専用パッケージも存在します。
 さらに、情報システム的な視点からの分類では、ERPと呼ばれる経営管理的なシステムもあり、人事業務に特化した業務パッケージも存在します。ERPに分類されるパッケージはすべて外国製であり、国産のERPは存在しません。情報システム的な切り口では、ソフトウェアを所有するか利用するかで分類する方法があり、最近では「クラウド」と呼ばれる機能を利用するだけで所有しないパッケージも増えてきました。

<機能分類>
  ◆ 統合型パッケージ
  ◆ (単機能特化型)ソリューションパッケージ
<システム分類>
  ◆ ERPパッケージ
  ◆ 業務パッケージ
<所有・非所有>
  ◆ オンプレミス(on-premises)
  ◆ クラウド(SaaS:Software as a Service)

2)外国製パッケージ
 ERP系の人事システムと言えば、SAPを始めとしてPeopleSoftやOracleのEBSなど外国製のパッケージが挙げられます。残念ながら、日本製のERPとして要件の揃ったパッケージは存在せず、人事以外にも会計があるとか、生産管理や販売管理があるため「ERP」と称しているだけです。まとまった商品系列があるからERPと呼ぶのは疑問です。

 ERPについての説明は別の機会に譲りますが、企業の諸業務を統合化したとPRしている商品については注意が必要です。特に日本の商品に顕著ですが、まるで出自が異なるソフトウェアをまとめてパッケージにして、「ERP」と呼んでいることがあります。データベースの構造も異なり、統合はされていないし、画面のルックアンドフィールも全く違います。

 このことは外国製のパッケージにも言えることで、つい最近まで買収合戦が華やかであった「タレントマネジメント系」ソフトウェアでも、バラバラの製品を買い集めて、「タレマネのすべての機能が揃いました」と売り出している状態でした。ひどいものになると、それらの別々に買収したソフトウェアがそれぞれにデータベースを持っているという有様で、売る方も大変だったことでしょう。
 外国製と言っても、ほぼすべてのものが欧米製です。SAPはドイツですが、その他は大体米国製です。中国がITに躍起になっていても、さすがにERPパッケージだけはコピーができません。いや、私が知らないだけで、中国国内では違う様相を呈しているかもしれませんが。また、インドからの流入もありませんが、こちらも情報不足です。思えば当たり前のことで、我々はタタやインフォシスのようなグローバル化している企業は多少分かるものの、中国やインド国内の企業がどのようなパッケージを使っているかなどは知りようがありません。実は日本でも使えるソフトウェアもあるのかもしれませんが、外国へ売っていくだけの力量はまだないのでしょう。

 私たちが勉強しているのは「人事管理」分野であり、失礼ですがヒトの値段が安い途上国においては、ヒューマンリソース管理のあり方が異なると考えた方が良いと思います。その意味で、価値観の同じ欧米先進国のソフトウェアを変わらず注視し続けることが当然の成り行きでしょう。