「タレントマネジメント」 その4
[ 掲載日 ]2019/10/07
[ 掲載日 ]2019/10/07
- 人事管理を「人材育成」をベースにしたものにした場合、職能資格等級制度で運用していくには無理があります。 「職能」というのは「職務遂行能力」のことですが、これまでの人事部が運用していた等級制度は、「職務」ではなく、その企業の序列を意味していました。 またその評価軸は、企業が一般的にもっている「期待される人材像」です。
- 「この人材像の元になっているのは、ミッションやビジョンと並び標榜されるバリュー、つまり人的資源に要求する価値観や行動規範です。 「こうありなさい」という社是などに表現されている「○○株式会社」の社員たるものはこう行動しなさいという指針です。 ここには、現業に携わる人やいわゆるホワイトカラー、或いは管理職といった職制の人々に対してのバリエーションはありますが、仕事の中身についての言及はありません。
- これまでの「職能等級制度」の限界は、企業の一般的規範をベースにしてますが、プロとしての「職務」の切り口が弱い、ということなのです。 これは、サラリーマンの終点が役員やジェネラルマネジャ(部長クラス)であって、業務のプロや専門職ではないのが原因です。 会社も社員も、そういうルートをメジャーなプロモーションモデルとして考え、「業務の専門家」をキャリアモデルとして扱って来なかったという報いなのです。
- 人事の管理サイクルから見ると、採用から色をつけない新規の「一括採用」を基準にしていて、入社する新人は自分がこれから何者になるかも分からない、 全く自分のビジネスマン人生を人事部に預けてしまうという、普通に考えても噴飯ものの条件から始まります。 採用担当や初任配置の担当者による振り分けが、その新入社員の人生を決めてしまうともいえなくもない訳です。 右も左も分からない学校卒業したての若い人材は、自分のキャリアをどう扱うべきかを、大学や高校でも教えてもらえない。 一部の人たちだけが、自分のリスクで進むべき道を決めています。確かに、不十分な情報や考察で一生を決めるのはリスクが高いとは思いますが、 でも一体、彼や彼女らの人生に責任が持てるのか、という質問を返したいと思います。
- キャリアプランニングは、十代の高校生や二十歳そこそこの大学生が人生の終りまで見通して作れるものではありません。 40歳になっても惑っている人もいるのですから。ただ、企業との関わり合いが、これまでの終身雇用の時代と異なり、 複数の企業を経験するのが当たり前になり、変わりゆく技術や経済の環境の中で、納得行くビジネス人生を歩くためには、 企業や人事部に自分の人生を預けてしまうという選択はあり得ないと覚悟を決めるべきでしょう。
- タレントマネジメントを始める前に、企業がどのような「人材」を求めているのか、需要が変化するのが当たり前のビジネス環境に、 どう対応すべきなのかという企業側の準備と共に、社員のみなさんにも「自分のキャリア」をどうマネジメントしていくべきなのかを考えさせることが必要だと思われます。